藤田Barに通うようになったのは、もちろんお酒がおいしいし料理がおいしいからではあるんだけども、そこに通っている常連のお客さんがとても良いからというのも非常に大きい。
飲みに行けば常連の誰かが飲んでてお話が出来る。飲み終わった後はバイバイだけども、また来ればまた会えることもわかっている。そしてまた会いたいと思える人ばかり。
別に藤田Barに限らず良いお店には良いお客さんがついているのだと思う。
雰囲気なのかね。何なんだろうね。その空間が好きな人が集まるわけだから、そういう雰囲気が出るんだろうね。
普通バーだと静かにしっぽり飲む感じだったりして他のお客さんと話す機会というのはそんなにないんじゃないかな。
全く無いわけではないけども、少なくともいつも行くバーで隣の人と気軽に話すなんてことはほぼない。
まあ、それってバーじゃなくて赤提灯系のノリだよねといわれればそれまでなんだけども・・・
僕が初めて藤田Barで飲んだときも、若さゆえでかなり飲んで食べて遅くまでお店にいたのだけども、その時に常連(?)と思わしきお客さんがフラッと入ってきた。
そもそも僕の様に一見で入る客の方が少ない店なので、入ってくる人はみんな常連といってもほぼ間違いではない。
お店の雰囲気もわからなかったので、そのまま一人で飲んでたのだけども、常連さんは僕の席から2つあけて席についた。
何も頼まずとも当然のごとく藤田さんがジンリッキーを作り出す。
なるほどそういうことか。常連さんがお店に入ってきてどうするかでお店の仕組みが少しわかった。
僕と常連さん(お名前はMさんだった)とバーカウンターをはさんで藤田さん。
この微妙な三角形。いつも飲みに行くバーでも良くある光景。
こういった場合は、バーテンダーがお酒なくなりそうな方に話し振って軽く話ししながら次何飲みますか?みたいな感じでバーテンダーと客というやり取りをするのが多い。
バーテンダーと客は話をするが、客同士で話をするなんてことはほとんどない。パーソナルスペースを配慮しての事だと思う。
藤田Barは違った。藤田さんを介して客同士がうまく話をしちゃう。
いつのまにか2つ空いてた席は埋まって隣に座っちゃうし、Mさんが持ってきた出張土産を肴に一緒に飲んじゃう。
ついさっきまで面識が全くなかったのに一緒に話してる。不思議な感じ。
なんでこんな事を今でも覚えてるのかというと、もちろん初めて藤田Barに行った時の印象が強いといのもあるのだけども、この常連客のMさんと約束をしたからです。
結局Mさんの方が先席を立ち会計をしたのだけども、藤田さんがお会計の計算をしている際にMさんが一言。「彼の分も一緒に」と告げる。
ついさっき1時間前は全くの他人でこんな見ず知らずの生意気な若造のために何を言ってるんだこの人はとビックリしちゃいましてね。
Mさんが来る前から初めてのお店で値段もわからず散々飲み食いしてましたからね。
どうしていいかわかんなかったんですけど、とにかく「がんばれ。若者よ。」と仰って僕の分も会計をしようとする。
藤田さんもせっかくだから受け取っておきなさいという感じでお会計をしてくれているのです。
とにかく驚いてしまってMさんにはありがとうございますしか言えなかったと思う。
こんな時にどうしたらいいのかわからず、とにかく何かお礼を言わなきゃと思って僕の口から出た言葉は
「まだ学生ですが、来年就職で東京に出ます。自分でお金を稼げるようになったらその時はお礼に一杯ご馳走させてください。」
であった。
出来過ぎてる感はあるけど実際約束したからなぁ。
それを聞いてMさんは「わかった。待ってるよ。」と言って帰っていった。
その瞬間藤田Barに通う事が確定したのだった。
カッコイイ大人に出会ってしまった。
また藤田BarでMさんに会えることを信じて通い続けているのだけどもあの日以来お会いできていない。
たまに藤田さんから「先週Mさんいらしてましたよ。」というニアミス報告はあるのだけどもね。
仕事の関係でなかなかお店には来られなくなったらしい。
いつになるかわからないけども、また藤田Barでお会いしたときにはあの時の約束を果たしたいと思っています。
思えばもう10年ほど前のことなんだなぁ。
約束を果たすまでは藤田Bar通いをやめるわけにはいかない。



